
【重要】すでに医師から糖尿病と診断されている方、特に薬物療法を受けている方は、主治医の指示に従って運動を行ってください。インスリンや一部の飲み薬で治療中の方は、運動によって低血糖を起こしやすくなることがあります。この記事は、予防や健診の数値が気になる段階の方に向けた一般的な情報です。
前回は、糖尿病予防のための糖尿病予防の食事編|40代からの血糖値と女性ホルモンの関係をお伝えしました。
食事と並んで欠かせないのが運動です。
日本糖尿病学会のガイドラインでも、食事や運動習慣を見直す生活習慣の改善は、2型糖尿病の発症を減らし、その効果は改善の取り組みを終えたあとも続くとして、強く推奨されています。
今回は、なぜ運動が血糖値に効くのか、そしてどう取り組めばよいのかを、トレーナーの視点からお話しします。
なぜ運動が血糖値に効くのか
鍵を握るのは、血糖値を下げる働きをもつインスリンというホルモンと、筋肉です。
インスリンは、血液中のブドウ糖を体の細胞へ取り込ませます。
その取り込み先として大きいのが筋肉で、インスリンがしっかり働いている状態では、取り込まれるブドウ糖のおよそ8割が骨格筋で処理されると報告されています。
筋肉は、成人女性で体重のおよそ3割、男性でおよそ4割を占める大きな組織です。
運動をすると、使われた筋肉が糖や脂肪をエネルギーとして使い、インスリンの効きもよくなって、血糖値が安定しやすくなります。
逆に言えば、筋肉が減ると、糖の大きな受け皿が小さくなってしまうということです。
筋肉と糖の関係は筋トレは血糖値対策に役立つ?筋肉と糖の関係と40代からの始め方を解説で詳しく解説しています。
40代以降の女性に、特に運動が必要な理由
前回の食事編でもお伝えしましたが、大切なことなので繰り返します。
女性ホルモンのエストロゲンは、筋肉や肝臓、脂肪組織でインスリンの効きに関わっていることが研究で示されています。
閉経の平均年齢は50歳前後で、その前後10年間の更年期には、エストロゲンが大きくゆらぎながら減っていきます。
エストロゲンが不足すると、肥満や2型糖尿病などにつながりやすい状態になると考えられています。
さらに、筋肉の量は何もしなければ年齢とともに減っていきます。
男女468人を調べた研究では、体重に占める筋肉の割合は30代から少しずつ下がり始め、50代の終わりごろからは筋肉の量そのものの減少が目立つようになり、特に下半身の筋肉が減っていました。
体の条件が変わり始める時期と、筋肉が減っていく時期が重なるのが40代以降です。
だからこそ、運動で筋肉を守ることの意味が、若い頃より大きくなります。
更年期世代の運動については更年期世代の体づくり|健康診断の数値改善に役立つ運動習慣とはもご覧ください。
筋トレと有酸素運動は組み合わせるのが効果的
筋トレ(レジスタンス運動)は、スクワットや腕立て伏せ、ダンベルなど、おもりや自分の体重を負荷にして行う運動です。
筋肉の量が増えることで糖を処理する力が高まり、血糖コントロールに役立ちます。
厚生労働省の身体活動・運動ガイドでは、筋トレによって筋力や身体機能、骨密度が改善することや、筋トレをしている人は糖尿病などの発症リスクが低いことも紹介されています。
血糖値だけでなく、骨の健康にも同時に働きかけられるのは、40代以降の女性にとって見逃せない点です。
有酸素運動は、速歩やジョギング、水泳など、大きな筋肉を使って続ける全身運動です。
運動中に糖と脂肪をエネルギーとして使い、内臓脂肪が減ることでインスリンの効きを妨げる物質が少なくなり、血糖値が安定しやすくなります。
どちらか一方ではなく「両方」
「どちらをやればいいですか」とよく聞かれます。
答えは「両方」です。
日本糖尿病学会のガイドラインでは、2型糖尿病の血糖コントロールに有酸素運動とレジスタンス運動の両方が推奨されており、2つを併用すると、それぞれ単独よりも効果的に糖尿病を改善させることも報告されています。
両者の違いは有酸素運動と無酸素運動の違い|効果的な取り入れ方を解説、同じ日に行うときの順番や間隔は筋トレと有酸素運動は一緒にやると効果が下がる?研究結果と順番・間隔のコツで解説しています。
いつ動く?食後1時間ごろと「座りっぱなし」を区切る工夫
血糖値は食後に上がります。
運動はいつ行っても構いませんが、特に食後1時間ごろに体を動かすと、食後の高血糖が改善されるとされています。
「食べてすぐ動くのは体に悪いのでは」と思われるかもしれませんが、散歩程度の軽い動きで十分です。
食後の血糖値の上がり方については“血糖値スパイク”を防ぎ、リバウンドしない体へ|40代からの賢い整え方もあわせてご覧ください。
「座りっぱなし」を区切るだけでも意味があります
ここが、最もお伝えしたいことです。
「運動といっても、まとまった時間なんて取れない」
そう感じておられる方は多いと思います。
けれど、長く座り続ける時間を、こまめな立ち上がりや軽い歩行で区切るだけでも、食後の血糖値の上昇がおさえられることが、7つの試験をまとめた研究で示されています。
この研究では、立ち上がるだけでも効果が見られ、軽く歩くほうがより大きな効果がありました。
厚生労働省のガイドでも、座っている時間が長くならないよう、例えば30分に1回は短時間でも体を動かすことが勧められています。
・食器を片づけながら立って動く
・テレビのCMの間に家の中を少し歩く
・デスクワークの合間に、いったん立ち上がる
「30分歩かなければ意味がない」わけではありません。
時間が取れない日は、通勤や買い物で歩く距離を少し増やす、階段を使うといった日常の工夫も勧められています。
どのくらいの頻度で続けるか
■ 有酸素運動
日本糖尿病学会の治療ガイドに基づく目安では、中くらいの強さ(ややきつい程度)で、週に合計150分以上、週3回以上行うことが勧められています。
運動による糖代謝の改善は運動後12〜72時間続くとされるため、運動しない日が2日以上続かないようにするのがポイントです。
■ 筋トレ
連続しない日に、週2〜3回が目安です。
「週150分」と聞くと多く感じるかもしれませんが、いきなり目標どおりにする必要はありません。
まずは歩く時間を増やすことから始め、少しずつ運動を加えていきましょう。
頻度の考え方は筋トレは毎日やるべき?40代からの適切な頻度と休息の考え方で詳しく解説しています。
安全に始めるために
これまで運動習慣がなかった方は、急に激しい動きをしないでください。
・運動の前後に5分程度の準備運動・整理運動を行う
・自分の体重や軽い負荷から始め、少しずつ負荷を上げる
・痛みが出たら中止する
筋トレでは、息をこらえて力むと血圧が急に上がりやすいため、呼吸を止めないように注意してください。
健診で血圧や血糖値を指摘されている方、持病のある方は、運動を始める前に医師に相談しておくと安心です。
健診で「適度な運動を」と言われた方は健康診断で「適度な運動を」と言われたら?運動の目安と自宅でできる始め方もご覧ください。
ひとりで判断しにくいことこそ、一緒に
「自分に合った強度が分からない」
「血圧も高めなので、どこまでやっていいのか不安」
こうしたご相談をよくいただきます。
アップルフィット倉敷は、40歳以上のお客様が約7割、女性のお客様が約8割を占めるパーソナルトレーニングジムです。
「健康診断の数値を整えたい」「この先も自分の足で元気に動いていたい」という理由でお越しになる方が中心です。
完全個室で、女性トレーナー5名をはじめとする経験豊富なトレーナーが、その日の体調を確認しながら負荷を調整します。
体成分測定で筋肉量の変化も追えるため、数値の背景で何が起きているかを一緒に見ていけます。
まとめ
・インスリンが働いているとき、取り込まれるブドウ糖の約8割は骨格筋で処理される
・40代以降はエストロゲンの減少と筋肉量の低下が重なりやすい
・筋トレと有酸素運動は組み合わせるのが効果的
・タイミングは食後1時間ごろがおすすめ
・座りっぱなしを区切るだけでも意味がある
・有酸素は週150分以上・週3回以上、筋トレは週2〜3回が目安
完璧を目指す必要はありません。
5年後10年後も心地よく動ける体を、できる範囲から整えていきましょう。
シリーズの第1回日本人は糖尿病になりやすい?-遺伝と生活習慣-もあわせてご覧ください。
参考資料
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」CQ・ステートメント・推奨グレード一覧(2024年)https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/00_07.pdf
厚生労働省 e-ヘルスネット 家光素行「糖尿病を改善するための運動」(2022年更新)https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-05-005.html
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて(2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/001195869.pdf
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」慢性疾患を有する人の身体活動のポイント(2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/001195871.pdf
DeFronzo RA, Tripathy D.「Skeletal muscle insulin resistance is the primary defect in type 2 diabetes」Diabetes Care(2009年)https://europepmc.org/article/PMC/PMC2811436
Janssen I, et al.「Skeletal muscle mass and distribution in 468 men and women aged 18-88 yr」Journal of Applied Physiology(2000年)https://europepmc.org/article/MED/10904038
Mauvais-Jarvis F, et al.「The role of estrogens in control of energy balance and glucose homeostasis」Endocrine Reviews(2013年)https://europepmc.org/article/MED/23460719
日本産科婦人科学会「更年期障害」(2025年)https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/
Buffey AJ, et al.「The Acute Effects of Interrupting Prolonged Sitting Time in Adults with Standing and Light-Intensity Walking on Biomarkers of Cardiometabolic Health in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis」Sports Medicine(2022年)https://europepmc.org/article/MED/35147898
