
健康診断で「血糖値が高めですね」と言われたことはありませんか?
血糖値というと食事だけを気にする方も多いのですが、実は筋肉も血糖値と深い関係があります。
筋肉は体を動かすためだけのものではなく、食事からとった糖を使う大切な場所でもあります。
今回は、筋肉と血糖値の関係、そして筋トレが血糖値対策に役立つ理由を、厚生労働省や日本糖尿病学会の情報をもとに解説します。
すでに糖尿病と診断されている方、血糖を下げる薬やインスリンを使っている方は、運動を始める前に必ず主治医に相談してください。
薬の種類によっては、運動中や運動後に低血糖を起こすことがあります。
筋肉は血糖値とどのように関係している?
私たちが食事からとった糖質は、消化・吸収されると血液中に入り、血液中のブドウ糖(血糖)になります。
すると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖を筋肉や肝臓などに取り込ませて、血糖値を元に戻します。
この血糖を取り込んで使う場所のひとつが「筋肉」です。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、運動をすると、使われた筋肉で糖や脂肪の利用が進み、血糖コントロールの改善やインスリンの効きやすさ(インスリン感受性)の向上が得られるとしています。
また、筋力トレーニング(レジスタンス運動)は、筋肉の量が増えることで糖を処理する力が高まり、血糖コントロールに役立つとされています。
つまり、筋肉を「動かすこと」と「保つこと」の両方が、血糖値の味方になるのです。
筋肉には種類がある
筋肉(骨格筋)をつくる筋線維は、大きく「遅筋」と「速筋」の2つのタイプに分けられます。
遅筋(赤筋)
マラソンのような、長く続ける持久的な動きが得意な筋線維です。
ウォーキングなどの有酸素運動や、日常生活の動作でよく使われます。
速筋(白筋)
収縮のスピードが速く、瞬間的に大きな力を出すのが得意な筋線維です。
階段を上る、重い荷物を持つ、椅子から立ち上がるといった動作や、ある程度の負荷をかける筋力トレーニングで使われます。
実際の筋肉には、この2つのタイプがモザイク状に混ざっていて、その割合は年齢やトレーニング、体を動かさない生活などによって変わることがわかっています。
有酸素運動と筋トレを組み合わせることで、両方のタイプの筋線維をまんべんなく使うことができます。
研究や国のガイドではどう言われている?
糖尿病診療ガイドライン2024
日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、2型糖尿病の血糖コントロールに、有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)が推奨されています(推奨グレードA)。
さらに、レジスタンス運動は骨格筋量や筋力を高めるため推奨されるとしています。
身体活動・運動ガイド2023
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、2型糖尿病のある方について、有酸素運動や筋力トレーニング、あるいはその組み合わせが、血糖コントロールを改善させることに強い根拠があるとしています。
また、筋トレをしている人は、していない人と比べて、糖尿病などの発症リスクが低いことも報告されています。
筋トレと有酸素運動の両方を行うと、さらに健康づくりの効果が期待できるとされています。
筋肉は何歳からでも鍛えられる
同じガイドでは、筋肉は年齢に関係なく鍛えることができるとしています。
一方で、国内で筋トレをしている人の割合は、年齢が上がるほど、また女性で低い傾向にあります。
40代以降の女性こそ、筋トレを始める意味が大きいといえます。
血糖値が気になる方の筋トレのポイント
週2〜3日、大きな筋肉を中心に
身体活動・運動ガイド2023では、筋トレを週2〜3日行うことがすすめられています。
胸、背中、腕、お腹、お尻、脚など、全身の大きな筋肉にまんべんなく負荷をかけることがポイントです。
なかでも、お尻や太ももなどの下半身は大きな筋肉が集まっていて、日常生活の動作にも深く関わっています。
運動しない日が2日以上続かないように
2型糖尿病のある方では、インスリンの効きをよくするために、運動をしない日が2日以上続かないようにすることがすすめられています。
e-ヘルスネットでは、運動による糖代謝の改善は運動後12〜72時間続くとされています。
食後に体を動かすのもおすすめ
e-ヘルスネットでは、食事の1〜2時間後に運動すると、食後の高血糖状態が改善されるとしています。
食後に少し歩く、家事で体を動かすといった小さな工夫も役立ちます。
無理なく、少しずつ
日常生活より少し強い負荷から始めて、少しずつ負荷を上げていくこと、そしてしっかり休む日をつくることが大切です。
血圧が急に上がらないよう、息を止めずに行いましょう。
運動の具体的な進め方は、糖尿病の予防と改善方法-運動編-|血糖値を安定させる筋トレと有酸素運動のコツで詳しく解説しています。
血糖値が気になる方こそ筋トレ習慣を
「筋トレは若い人がするもの」
「年齢を重ねたら運動は必要ない」
と思っている方もいるかもしれません。
しかし、筋肉は何歳からでもトレーニングで変えていくことができます。
大切なのは、無理な重さを扱うことではなく、自分の体力に合わせて続けることです。
ただし、すでに糖尿病の治療を受けている方は、運動の内容や強さについて主治医の指示を優先してください。
インスリンや血糖を下げる飲み薬を使っている方は、運動量が多いときに低血糖になりやすいため、補食などの工夫が必要になることがあります。
食事面からの血糖値対策は糖尿病予防の食事編|40代からの血糖値と女性ホルモンの関係、健康診断の数値と運動については更年期世代の体づくり|健康診断の数値改善に役立つ運動習慣とはもあわせてご覧ください。
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参考資料
厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病を改善するための運動」(2019年)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-005.html
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」CQ・ステートメント・推奨グレード一覧(2024年)https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/00_07.pdf
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」慢性疾患を有する人の身体活動のポイント(2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/001195871.pdf
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて(2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/001195869.pdf
筑波大学「筋肉を速筋タイプにする転写因子を同定」プレスリリース(2023年)https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20230324143000.pdf
長寿科学振興財団 健康長寿ネット「糖尿病の運動療法とは」(2020年)https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shippei-undou/undou-tounyou.html
