
「食事も運動も意識しているのに、なかなか思うように変わらない」
「少し食べただけなのに、すぐにお腹が空いて甘いものが欲しくなる」
そんな経験はありませんか?
40代以降は、女性ホルモンの変化や生活環境の変化が重なり、以前と同じ生活をしていても体が変わりにくいと感じやすい時期です。
その背景のひとつとして、最近よく耳にするのが「血糖値スパイク」です。
今回は、血糖値スパイクとはどんな状態なのか、どこまでわかっていて、どこからはまだ研究段階なのかを整理したうえで、血糖値の波をおだやかに保つための食事・運動・生活習慣のポイントを解説します。
血糖値スパイクとは?食後の「急な上がり下がり」のこと
食事をすると、ごはんやパン、麺類、甘いものなどに含まれる糖質が分解され、血液中のブドウ糖(血糖)が増えます。
すると、すい臓から「インスリン」というホルモンが分泌され、血糖を筋肉などの細胞に取り込ませて、血糖値を元に戻します。
インスリンは、体がエネルギーを使うために欠かせない大切なホルモンです。
「血糖値スパイク」は、食後に血糖値が急に大きく上がり、その後急に下がる、という変動の大きい状態を指す一般向けの呼び方で、医学的には「食後高血糖」や「血糖変動」として扱われます。
血糖値の「落ち込み」と空腹感の関係
「食後すぐにお腹が空く」という感覚は、血糖値の動きと関係している可能性があります。
英国と米国の1,070人に血糖値を連続して測る機器をつけてもらい、食後の血糖値と空腹感を調べた研究(2021年)があります。
この研究では、食後の血糖値のピークの高さよりも、食後2〜3時間に血糖値が食前より低いところまで下がる「落ち込み」が大きい人ほど、その後の空腹感が強く、次の食事までの時間が短く、1日に食べる量も多い傾向がみられました。
ただし、関連の強さは弱めで、「血糖値が下がるから食べすぎる」と原因まで証明したものではありません。
また、体重の増減は、基本的には食事でとるエネルギーと、体が使うエネルギーのバランスで決まります。
国の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、エネルギーのとりすぎや不足は、体重の変化やBMIで評価するとしています。
「インスリンが出ると太る」「血糖値スパイクだけがリバウンドの原因」と考えるのは単純化しすぎです。
血糖値の波をおだやかにすることは、空腹感をコントロールし、食べすぎを防ぐための工夫のひとつと考えるのがよいでしょう。
食事:食べる順番と主食の選び方
野菜から先に食べる
日本の研究では、2型糖尿病の方が野菜を先に、ごはんなどの炭水化物を後に食べると、逆の順番で食べた場合に比べて食後の血糖値とインスリンの上昇が小さくなり、血糖コントロールの改善が2.5年間続いたと報告されています。
同じ研究グループの試験では、血糖値が正常な人でも、野菜を先に食べたほうが血糖値の変動が小さくなりました。
野菜・海藻・きのこなどの副菜から食べ始め、肉・魚・卵・大豆製品などの主菜、ごはんやパンなどの主食の順に食べるのを、まずは1日1食から試してみましょう。
主食は「抜く」より「選ぶ」
日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、2型糖尿病の血糖コントロールに、低GI食(食後の血糖値が上がりにくい食品を中心にした食事)や、食物繊維を積極的にとることが有効とされています。
白米に雑穀や麦を混ぜる、全粒粉のパンを選ぶ、主食と一緒に野菜や海藻をたっぷりとるなど、主食を抜くのではなく、選び方と組み合わせを工夫するのがおすすめです。
なお、GI値は同じ食品でも食べる量や組み合わせ、調理法によって変わるため、数値だけで食品の良し悪しを決めないようにしましょう。
運動と睡眠:筋肉を動かし、しっかり休む
筋肉を動かすことは血糖値の味方
血液中の糖は、インスリンの働きによって筋肉などに取り込まれて使われます。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、2型糖尿病の方について、有酸素運動や筋力トレーニング、あるいはその組み合わせが、血糖コントロールを改善させることに強い根拠があるとしています。
また、インスリンの効きをよくするために、運動をしない日が2日以上続かないようにすることがすすめられています。
同じガイドでは、長時間座りっぱなしでいるのを、例えば30分ごとに立ち上がって体を動かして中断することが、食後の血糖値や中性脂肪などのリスクを下げるうえで重要だと報告されています。
食後に少し歩く、座りっぱなしの時間をこまめに区切るといった小さな工夫も、血糖値の波をおだやかにする習慣になります。
成人の目安は、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)、筋力トレーニングを週2〜3日です。
血糖値と運動の関係は、糖尿病の予防と改善方法-運動編-|血糖値を安定させる筋トレと有酸素運動のコツで詳しく解説しています。
睡眠をおろそかにしない
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠不足を含む睡眠の問題が慢性化すると、肥満や2型糖尿病などの発症リスクの上昇に関連するとしています。
成人は、6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することがすすめられています。
また、就寝直前の夕食や夜食、朝食を抜くといった食習慣の乱れや運動不足は、睡眠で休養がとれている感覚(睡眠休養感)を下げる要因とされています。
夕食は寝る直前を避ける、日中に体を動かすといった習慣は、睡眠と血糖値の両方にとってプラスになります。
血糖値が高めの方・治療中の方へ
健康診断で血糖値やHbA1cが高めと言われた方は、まず医療機関で相談し、必要な検査や治療を受けましょう。
糖尿病の薬やインスリンを使っている方は、食事の内容を大きく変えたり運動を始めたりすると、低血糖を起こすことがあります。
身体活動・運動ガイド2023でも、持病のある方は、運動を始める前に医師などの専門家に相談し、低血糖や合併症の有無を確認することとしています。
食事の変え方や運動の強さは、主治医の指示を優先してください。
我慢ではなく「仕組み」を整える
40代以降の体づくりに大切なのは、無理な「我慢」ではなく、続けられる「仕組み」をつくることです。
「食べる順番を変える」「主食の選び方を工夫する」「座りっぱなしを区切る」「週2〜3日、筋力トレーニングをする」「睡眠時間を確保する」。
どれも一つひとつは小さなことですが、積み重ねることで、5年後10年後も元気に動ける体の土台になります。
リバウンドについては、一度太ると痩せにくい?脂肪細胞とリバウンドの仕組み、食事面からの血糖値対策は糖尿病予防の食事編|40代からの血糖値と女性ホルモンの関係もあわせてご覧ください。
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参考資料
Wyatt P, et al.「Postprandial glycaemic dips predict appetite and energy intake in healthy individuals」Nature Metabolism(2021年)https://eprints.whiterose.ac.uk/id/eprint/183233/
Imai S, Fukui M, Kajiyama S.「Effect of eating vegetables before carbohydrates on glucose excursions in patients with type 2 diabetes」Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition(2014年)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/54/1/54_13-67/_article/-char/ja/
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」CQ・ステートメント・推奨グレード一覧(2024年)https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/00_07.pdf
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨事項(成人版)(2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/001195866.pdf
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」慢性疾患を有する人の身体活動のポイント(2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/001195871.pdf
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
