
「認知機能の低下だから、パズルゲームなど頭を使っていれば認知症にはなりにくい」— そのように考えている方は多いかもしれません。
実際のところ、認知症の予防には何が最も役立つのでしょうか?
今回は、認知症の予防に焦点を当て、前編では「運動」が果たす決定的な役割についてお伝えします。
記憶障害、見当識障害(時間や場所が分からなくなる)、判断力の低下など、脳の認知機能障害により日常生活に支障をきたすようになる疾患のことです。
厚生労働省の最新推計(2024年)によると、2022年時点での認知症有病率は12.3%、2025年には約12.9%(約8人に1人)、2040年には14.9%に達すると予測されています。また、軽度認知障害(MCI)を含めると、高齢者の約28%が認知症またはその予備軍という状況です1。
さらに世界では約3秒に1人が認知症を発症しており、身近な問題となっています2。
参考文献:
【1】 厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計(2024年) 」
【2】日本ケアフィット共育機構「超高齢社会と認知症の推移」
冒頭の問いかけに戻りますが、認知症の予防は、パズルゲームや計算ドリルといった「脳トレ」だけでは難しいことが分かっています。特定の認知機能の訓練はできても、疾患自体の根本的な予防には繋がりません。現に、高度な知性を有する方が認知症を発症するケースも少なくありません。
では、認知症の予防は不可能なのでしょうか?
いいえ、予防は可能です。以下で、運動の重要性について説明していきます。
認知症の予防および進行の遅延には、運動が非常に有効であることが近年の研究で示されています。
運動を行うことによって、脳の神経栄養因子である「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質が増加します。BDNFは、脳の神経細胞の発達や保護を促し、認知機能の予防に役立つことが期待されています。特に、BDNFは記憶を司る脳の海馬に多く存在するため、学習能力の向上にも関与すると言われています。
もう一つ重要なのが、筋肉から分泌される生理活性物質「マイオカイン」です。マイオカインは認知症や糖尿病、がんなどの予防に寄与する可能性が報告されており、詳細なメカニズムや効果については現在も研究が進められています。
このマイオカインを増やすためには、ある程度の強度の高い筋力トレーニングが必要になります。
まずは自重のスクワットを1日20回を3セット目標にしてみましょう(連続で行う必要はありません)。
これに慣れた方や物足りない方は、負荷(重さ)を追加して行えると、より効果的です。
一度発症した認知症で認知機能を完全に元に戻すことは難しいとされていますが、適切な運動は症状の進行を緩やかにする可能性があり、薬物治療やリハビリ、日常のケアと併せて継続することが大切です。
いかがでしたでしょうか?
今回は、認知症の予防には「脳トレ」ではなく、「運動」と「筋肉から出るマイオカイン」が鍵となることを解説しました。適度な運動を習慣づけることが、脳の健康維持に直結します。
次回の【後編】では、認知症予防をサポートする「栄養面からのアプローチ」について詳しくお伝えします。
後編も、ぜひご覧ください。