
前回までは、糖尿病の予防と改善方法-運動編-|血糖値を安定させる筋トレと有酸素運動のコツなど、高血圧や糖尿病の予防・改善についてお話ししてきました。
今回は、健康診断で指摘されることの多い「脂質異常症」について解説します。
健康診断の結果用紙にある「脂質」の項目、皆さんはチェックされましたか。
ご自身の数値と照らし合わせながら、将来の健康を守るためのヒントとして読み進めてみてください。
脂質異常症とは?数値が教える「血液のサイン」
脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れた状態のことです。
以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールが低い状態も含むため、2007年に日本動脈硬化学会が「脂質異常症」という名前に改めました。
まずは、健康診断に出てくる3つの数値の意味を確認しましょう。
・LDL(悪玉)コレステロール
肝臓から全身の細胞へコレステロールを運ぶ役割があります。増えすぎると血管の壁に入り込み、動脈硬化の原因になります。
・HDL(善玉)コレステロール
使われなくなった余分なコレステロールを、全身から肝臓へ運び戻す役割があります。血管の壁にたまったコレステロールを引き抜く働きもあります。
・中性脂肪(トリグリセライド)
体のエネルギー源となる脂肪です。高いと動脈硬化の病気のリスクを高め、非常に高い場合は急性膵炎の原因にもなります。
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、次のうちひとつでも当てはまると脂質異常症と判断されます。
・LDLコレステロール:140mg/dL以上(120〜139mg/dLは「境界域」)
・HDLコレステロール:40mg/dL未満
・中性脂肪:空腹時の採血で150mg/dL以上、空腹時でない採血(随時)で175mg/dL以上
・non-HDLコレステロール:170mg/dL以上(150〜169mg/dLは「境界域」)
ただし、基準を超えたからといって、すぐに薬が必要になるわけではありません。
血圧や血糖値、喫煙の有無などほかの危険因子も合わせて、医師が治療の必要性を判断します。
痛みがないまま進む「動脈硬化」
脂質異常症の怖いところは、「痛みも違和感もまったくない」という点です。
血液中にLDLコレステロールが増えると、LDLが血管の壁に入り込み、変性して内側にたまっていきます。
このたまった部分を「プラーク」と呼び、血管の内側が狭くなった状態が動脈硬化です。
動脈硬化が心臓の血管で進むと狭心症や心筋梗塞、脳の血管で進むと脳梗塞を引き起こすことがあります。
日本動脈硬化学会によると、コレステロールの異常は通常症状がなく、突然の狭心症や心筋梗塞で初めて明らかになることも多いとされています。
だからこそ、健康診断の数値が基準に近い段階から「早めの対策」を始めることが大切です。
なぜ数値が乱れる?生活習慣と体の変化
脂質異常症の原因には、遺伝や体質もありますが、多くは生活習慣が関わっています。
日本動脈硬化学会は、LDLコレステロールが高くなる理由として、肝臓でのコレステロールの合成が増えること、食事からの脂質が増えること、ホルモンのバランスが変わることなどを挙げています。
血液中のコレステロールを一定に保つしくみには、女性ホルモンも関わっています。
40代以降の女性は、ホルモンバランスが変わりやすい時期だからこそ、健康診断の数値の変化に目を向けておきたいところです。
また、トレーナーとして注目したいのが「内臓脂肪」と「運動不足」です。
お腹の内側に脂肪がたまるメタボリックシンドロームでは、中性脂肪が高くなり、HDLコレステロールが下がりやすくなります。
さらに、喫煙や運動不足もHDLコレステロールを下げる原因になります。
反対に、運動をすると中性脂肪が下がり、HDLコレステロールが上がることがわかっています。
つまり、「お腹周りを引き締め、体を動かす習慣をつくること」は、数値改善の大きな味方と言えます。
未来の健康を作る「3つのアプローチ」
脂質異常症の改善には、主に次の3つの方法があります。
① 食事療法
脂質の量だけでなく、「種類」を選ぶことが大切です。肉の脂身やバターなどの飽和脂肪酸を控え、魚や大豆、野菜、海藻、きのこなどを増やす日本食パターンの食事が勧められています。
② 運動療法
ウォーキングなどの中くらいの強さの有酸素運動を、1日30分、週3回以上を目標に行うことが勧められています。
③ 薬物療法
食事や運動で十分に下がらない場合や、動脈硬化のリスクが高い場合には、医師の判断で薬を使います。
特に「食事」と「運動」は、ご自身の意識次第で今日から変えられる方法です。
具体的な食事のコツはコレステロール値どうやって下げる?-食事編-、運動のポイントは脂質異常症は運動で改善できる?30分から始める現実的な対策とはで詳しく解説しています。
まずは「今の生活習慣に少しだけ変化を加える」ことから始めましょう。
なお、健康診断で「要受診」「要精密検査」と書かれていた方は、自己判断せずに、まずは医療機関で相談してください。
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参考資料
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」第3章(脂質異常症診断基準 表2-1)https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_3_230210.pdf
日本動脈硬化学会「コレステロール摂取に関するQ&A」https://www.j-athero.org/jp/general/5_colqa/
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患とは?」https://www.j-athero.org/jp/general/2_atherosclerosis/
日本動脈硬化学会「健康診断で異常を言われたら?」https://www.j-athero.org/jp/general/3_kenkoushindan/
厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症/高脂血症」(2021年)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-029.html
