
【重要】すでに医師から糖尿病と診断されている方は、主治医や管理栄養士の指示に従って食事や生活習慣の改善に取り組んでください。この記事は、予防や健診の数値が気になる段階の方に向けた一般的な情報です。
前回のコラム日本人は糖尿病になりやすい?-遺伝と生活習慣-では、日本人が抱えるリスクと、放置が招く合併症についてお伝えしました。
今回は、その対策の柱となる「食事」に焦点を当てて解説します。
日本糖尿病学会のガイドラインでも、食事や運動習慣の見直しを中心とした生活習慣の改善は、2型糖尿病の発症を減らし、その効果は取り組みを終えたあとも続くとして、強く推奨されています。
「以前と同じなのに、数値が上がってきた」方へ
健康診断の結果を見て、こう感じたことはありませんか。
「食べる量も生活も変えていないのに、血糖値やHbA1cが少しずつ上がってきた」
40代以降の女性の場合、その背景には女性ホルモンの変化が関わっていると考えられています。
更年期を境に、体の条件が変わります
閉経の平均年齢は50歳前後で、その前後5年ずつの約10年間を「更年期」といいます。
この時期には、女性ホルモンのエストロゲンが大きくゆらぎながら減っていきます。
エストロゲンは、筋肉や肝臓、脂肪組織などでインスリンの効きや、脂肪がたまりにくい状態の維持に関わっていることが研究で示されています。
そのためエストロゲンが不足すると、インスリンが効きにくくなったり内臓脂肪がつきやすくなったりして、肥満や2型糖尿病などにつながりやすい状態になると考えられています。
つまり「何も変えていないのに数値が動く」のは、意志や努力だけの問題ではありません。体の側で起きている変化です。
だからこそ、この年代からは食事の中身や食べ方を、少し見直すことが大切になります。
更年期世代の体づくりについては更年期世代の体づくり|健康診断の数値改善に役立つ運動習慣とはもあわせてご覧ください。
まずはチェック:食生活にこんな習慣はありませんか?
当てはまるものが多いほど、見直せるところがあるサインです。
・肉類中心で、野菜・きのこ・海藻類をあまり食べない
・揚げ物やマヨネーズなど、脂質の多いものをよく食べる
・味の濃いものが好きで、麺類のスープを飲み干すことが多い
・清涼飲料水や菓子パン、お酒が毎日の習慣になっている
・朝食を抜く、夕食が遅い、食べるのが速い
飲み物に含まれる糖については食品表示の次に知ってほしいこと|見落とされやすい“飲み物の糖質”と肝臓の数値で詳しく解説しています。
我慢より「食べ方の工夫」を
血糖値を安定させるうえで大切なのは、量を極端に減らすことより、食べ方を少し変えることです。
ポイント1:ごはん・パン・麺を最後に回す
以前から「野菜から先に食べる(ベジファースト)」がよく勧められてきました。
今も有効な方法のひとつですが、近年は主食を食べる前に魚や肉を食べることでも、食後の血糖値の上がり方がゆるやかになることが分かってきています。
日本で行われた研究では、2型糖尿病の方と健康な方のどちらでも、ごはんの前に魚や肉を食べたときのほうが、ごはんを先に食べたときより食後の血糖値の上昇がおだやかだったと報告されています。
つまり大切なのは「野菜が最初」かどうかより、ごはん・パン・麺を最後に回すことです。
・野菜 → おかず → ごはん
・おかず → 野菜 → ごはん
どちらでも構いません。
ただし、野菜を先に食べすぎてお腹がいっぱいになり、おかず(たんぱく質)が食べられなくなるのは避けたいところです。特に食が細い方は注意してください。
食べる順番の考え方はベジファーストはもう古い?食べる順番の考え方と40代からの上手な取り入れ方、食後の血糖値の上がり方については“血糖値スパイク”を防ぎ、リバウンドしない体へ|40代からの賢い整え方で詳しく解説しています。
ポイント2:ゆっくり、よく噛んで食べる
国内の調査では、食べるのが速い人ほどBMIが高く、20歳のころからの体重の増え方も大きい傾向があることが分かっています。
厚生労働省の検討会では、ひと口30回噛むことを目安にする「噛ミング30(カミングサンマル)」も提唱されています。
毎回30回は難しくても、ひと口ごとに箸を置く、よく噛む食材を取り入れるなど、できることから始めてみてください。
ポイント3:糖の代謝を支える栄養もとる
ビタミンB1は、ブドウ糖をエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。
糖質を多くとる人やよく体を動かす人ほど多く必要になるとされているので、不足しないようにしましょう。
栄養素ごとの役割は5大栄養素の役割とは|40代からの体をつくる食事の基本をご覧ください。
血糖値コントロールを助ける食材
■ 全粒穀物(玄米・もち麦・ライ麦パンなど)
日本糖尿病学会のガイドラインでは、2型糖尿病の血糖コントロールに積極的な食物繊維の摂取や、低GI食(血糖値が上がりにくい食事)が有効とされています。外皮や胚芽が残っている全粒穀物は食物繊維が多く、ビタミンB1も白米より多く含まれます。
白米と玄米の違いは白米と玄米の違いとは?栄養・血糖値への影響と40代からの上手な選び方で紹介しています。
■ 青魚(アジ・サバ・イワシなど)
EPAやDHAといったn-3系の脂が豊富です。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、これらの脂は中性脂肪が高い状態を改善し、心臓の病気を防ぐ効果が期待できるとされています。糖尿病では血管の病気を防ぐことも大切です。
油の摂り方はオメガ3とオメガ6のバランス|油の摂り方を見直すもご参照ください。
■ 豚の赤身肉
豚のヒレやモモの赤身にはビタミンB1が多く含まれています。脂身の少ない部位を選ぶと、たんぱく質をしっかりとりながら余分な脂を抑えられます。
■ 野菜・きのこ・海藻
低カロリーで食物繊維が多いのが特徴です。野菜は1日350g以上が目安とされています。
■ 完璧にそろえる必要はありません
これらを毎日すべてそろえる必要はありません。「白米にもち麦を混ぜてみる」「週1回は魚をメインにしてみる」など、小さな置きかえから始めるだけでも十分に意味があります。
実践メニュー例
以下は、主食・主菜・副菜をそろえる組み合わせの一例です。必要な量は身長・体重・活動量・年齢によって大きく変わるので、自己判断で極端に減らさないでください。
■ コンビニ編
・朝:サラダチキン + ゆで卵 + 無糖ヨーグルト
・昼:サバの塩焼き弁当(ごはんは軽めに)+ もずく酢
・夜:もち麦おにぎり + 鶏と野菜のスープ
■ 自炊編
・朝:ライ麦パン + 目玉焼き + 彩りサラダ
・昼:玄米ごはん + 鮭の塩焼き + ほうれん草のお浸し
・夜:鶏ごぼう鍋(野菜・きのこたっぷり)+ ひじきの煮物
食事と一緒に、筋肉も守る
ここまで食事の話をしてきましたが、もうひとつ大切なことがあります。
インスリンがしっかり働いている状態では、取り込まれるブドウ糖のおよそ8割が骨格筋で処理されると報告されています。
つまり筋肉が減ると、糖の大きな受け皿が小さくなってしまうということです。
40代以降は、何もしなければ筋肉は少しずつ減っていきます。更年期のホルモンの変化と、筋肉量の減少。この2つが重なりやすいのがこの年代です。
筋肉と糖の関係は筋トレは血糖値対策に役立つ?筋肉と糖の関係と40代からの始め方を解説をご覧ください。
糖尿病の予防・改善は毎日の積み重ねですが、「自分に合った量」を一人で判断し続けるのは大変です。
アップルフィット倉敷は、40歳以上のお客様が約7割、女性のお客様が約8割を占める、完全個室のパーソナルトレーニングジムです。
「健康診断の数値を整えたい」「この先も自分の足で元気に動いていたい」という理由でお越しになる方が中心です。
女性トレーナー5名をはじめとする経験豊富なトレーナーが、普段の食事内容を伺いながら、無理のない形をご提案します。体成分測定で筋肉量の変化も確認できるので、数値の背景で何が起きているかを一緒に見ていけます。
まとめ
・40代以降の女性は、エストロゲンの減少で血糖値が上がりやすい状態になりやすい
・食べ方は「ごはん・パン・麺を最後に」を意識する
・野菜を食べすぎてたんぱく質が不足しないよう注意
・ゆっくりよく噛むことも大切
・小さな置きかえ(もち麦・玄米、週1回は魚)から始めれば十分
・食事と一緒に、糖の受け皿である筋肉を守る
次は糖尿病予防の運動編|血糖値を安定させる筋トレと有酸素運動のコツで、体づくりの面からお伝えします。
5年後10年後も心地よく過ごせる体を、日々の食事から整えていきましょう。
参考資料
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」CQ・ステートメント・推奨グレード一覧(2024年)https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/00_07.pdf
日本産科婦人科学会「更年期障害」(2025年)https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/
Mauvais-Jarvis F, et al.「The role of estrogens in control of energy balance and glucose homeostasis」Endocrine Reviews(2013年)https://europepmc.org/article/MED/23460719
Kuwata H, et al.「Meal sequence and glucose excursion, gastric emptying and incretin secretion in type 2 diabetes: a randomised, controlled crossover, exploratory trial」Diabetologia(2016年)https://europepmc.org/article/MED/26704625
厚生労働省 e-ヘルスネット 安藤雄一「速食いと肥満の関係 -食べ物をよく『噛むこと』『噛めること』」(2020年更新)https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-10-002.html
長寿科学振興財団 健康長寿ネット「ビタミンB1の働きと1日の摂取量」(2025年)https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b1.html
厚生労働省 e-ヘルスネット 塚原丘美「脂質異常症の食事」(2025年更新)https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-012.html
DeFronzo RA, Tripathy D.「Skeletal muscle insulin resistance is the primary defect in type 2 diabetes」Diabetes Care(2009年)https://europepmc.org/article/PMC/PMC2811436
