
「運動の前には、しっかりストレッチをしましょう」。
学生時代、体育の授業や部活動でそう教わった方も多いのではないでしょうか。
実はストレッチには、体を動かしながら行う動的ストレッチと、じっくり伸ばして止まる静的ストレッチの2種類があり、それぞれ向いているタイミングが違います。
今回は、2つのストレッチの違いと、研究でわかってきた効果、運動の前後でどう使い分ければよいかをお伝えします。
動的ストレッチと静的ストレッチの違い
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)は、関節を大きく動かしながら、筋肉を伸ばしたり縮めたりするストレッチです。
例えば、脚を前後に振るレッグスイング、腕を大きく回すアームサークル、その場で膝を高く上げる足踏みなどがあります。
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)は、筋肉をゆっくり伸ばせるところまで伸ばし、その姿勢で止まって保つストレッチです。
前屈で太ももの裏を伸ばす、壁に手をついてふくらはぎを伸ばすなど、一般的に「ストレッチ」と聞いて思い浮かべるのはこちらでしょう。
運動前は「動的ストレッチ」がおすすめな理由
健康な人を対象にした研究をまとめた2016年の分析では、運動の直前に行うストレッチの影響が次のように整理されています。
・動的ストレッチ:直後の運動のパフォーマンスがわずかに向上した(平均+1.3%)
・静的ストレッチ:直後の運動のパフォーマンスがやや低下した(平均−3.7%)
ただし、静的ストレッチの影響は伸ばす時間によって違い、1つの筋肉につき60秒以上伸ばすと低下が大きく(−4.6%)、60秒未満ではごくわずか(−1.1%)でした。
また、静的ストレッチのあとに体を動かす準備運動を加えた場合は、はっきりした影響は見られませんでした。
つまり、運動前の静的ストレッチが絶対にだめというわけではなく、長く伸ばしすぎず、そのあとに体を動かす準備運動を組み合わせることが大切です。
動的ストレッチは筋肉や体を温め、これから動くための準備として取り入れやすいのが特長です。
身近な例ではラジオ体操も、関節を大きく動かす動的ストレッチの要素を含んだ準備運動として活用できます。
運動後や寝る前は「静的ストレッチ」で柔軟性とリラックスを
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、ストレッチングは体の柔軟性を高めるのに効果的で、柔軟性を高める効果については静的ストレッチが動的ストレッチに劣らないとされています。
また、全身の筋肉を30分ほどかけて順番に伸ばすストレッチの前後で調べると、心拍数が下がるなど、自律神経のバランスがリラックスの方向(副交感神経が優位)へ変化したことも報告されています。
運動のあとのクールダウンや、お風呂上がり、寝る前の時間に、ゆっくり呼吸をしながら行うのがおすすめです。
静的ストレッチの詳しいやり方は静的ストレッチとは?反動を使わず正しく伸ばすコツで解説しています。
知っておきたい「ストレッチだけではできないこと」
ストレッチには柔軟性を高める、リラックスするといった良さがある一方で、研究からわかってきた「得意ではないこと」もあります。
ストレッチだけでケガを防ぐのは難しい
25の研究、約2万6千人分をまとめた分析では、ストレッチ単独ではスポーツでのケガを減らす効果は見られませんでした。
一方で、筋力トレーニングはケガを3分の1未満に減らしたと報告されています。
ケガを防ぐためには、ストレッチに加えて、体を支える筋力をつけることが大切です。
筋肉痛を大きく減らす効果はほとんどない
運動の前後のストレッチと筋肉痛の関係を調べた研究をまとめたコクラン・レビュー(2011年)では、ストレッチをしても、翌日の筋肉痛は100点満点で1点程度しか変わらず、健康な成人の筋肉痛を意味のある程度に減らす効果はないと結論づけられています。
「ストレッチをしたのに筋肉痛になった」というのは、決して方法が間違っていたからではありません。
筋肉痛の原因や回復のさせ方はつらい筋肉痛・肉離れを早く治すには?違いの見分け方と食事・休み方をご覧ください。
効果を高めるストレッチのやり方と注意点
静的ストレッチの5つの原則(厚生労働省e-ヘルスネットより)
・1か所につき20秒以上かけて伸ばす
・伸ばしている部位を意識する
・痛くなく、気持ちよい程度に伸ばす(痛いほど伸ばすと筋肉がかえって硬くなる)
・呼吸を止めない(血圧が上がることがあるため)
・目的に合わせて伸ばす部位を選ぶ
動的ストレッチのポイント
・いきなり大きく動かさず、小さな動きから始めて、少しずつ動きを大きくする
・反動をつけて勢いよく伸ばしすぎない
なお、運動前の静的ストレッチは、1つの筋肉につき60秒未満にとどめ、そのあとに体を動かす準備運動を入れると安心です。
ストレッチと筋トレを組み合わせて、動ける体づくりを
ストレッチは、場所や道具を選ばず、誰でも始めやすい運動です。
e-ヘルスネットでも、ストレッチングは単独で行うより、有酸素運動や筋力トレーニングと組み合わせることで、よりよい効果が期待できるとされています。
ストレッチの健康効果やダイエットとの関係はストレッチで痩せる?40代からの体を整える本当の効果でも詳しくお伝えしています。
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5年後10年後も元気に動ける体を、あなたに合った方法で一緒につくっていきましょう。
参考資料
Behm DG, et al.「Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review」Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism(2016年)https://europepmc.org/article/MED/26642915
厚生労働省 e-ヘルスネット 宮地元彦「ストレッチングの効果」(2026年更新)https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-04-006.html
厚生労働省 e-ヘルスネット 宮地元彦「ストレッチングの実際」(2026年更新)https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-04-007.html
Lauersen JB, et al.「The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials」British Journal of Sports Medicine(2014年)https://europepmc.org/article/MED/24100287
Herbert RD, et al.「Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise」Cochrane Database of Systematic Reviews(2011年)https://europepmc.org/article/MED/21735398
