
デスクワークでの長時間作業や、スマートフォンをのぞき込む姿勢。
気づけば肩が内側に入り込んでしまう「巻き肩」に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省の2025年の国民生活基礎調査では、女性が感じている体の不調のうち、「肩こり」は「腰痛」に次いで2番目に多い症状でした。
肩まわりの不調は、それだけ多くの方にとって身近な悩みです。
今回は、巻き肩がどのような状態なのか、どの筋肉が関わっているのか、そして筋トレとストレッチでどう整えていけばよいのかをお話しします。
「巻き肩」と「猫背」の違い
「巻き肩」は医学的な診断名ではなく、一般に、肩が体の前方へ出て、内側に巻き込まれたような姿勢を指す言葉です。
肩甲骨が背骨から離れて外側に開き、肩の位置が前に出ているのが特徴です。
一方の「猫背」は、肩だけでなく、背骨(特に胸のあたりの背骨)全体が後ろへ丸まった姿勢を指します。
二つは同時に起こることも多いですが、巻き肩は特に肩まわりの筋肉のバランスの崩れが関わっているのが特徴です。
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巻き肩の正体は「前が硬く、後ろが弱い」筋肉のアンバランス
パソコンやスマートフォンの操作、家事など、日常生活では腕を体の前で使う時間が長くなりがちです。
その姿勢が続くと、体の前側の筋肉は縮んだまま硬くなり、背中側の筋肉は引き伸ばされたまま働きにくくなっていきます。
硬くなりやすい前側の筋肉

・小胸筋:胸の奥にあり、肩甲骨を前下方に引く筋肉です。硬くなると肩が前に引き出されやすくなります。
・大胸筋:胸の表面にある大きな筋肉です。腕を前に出す姿勢が続くと縮みやすく、肩を前方に引っ張ります。
弱くなりやすい背中側の筋肉

・菱形筋:肩甲骨を背骨側に引き寄せる筋肉です。
・僧帽筋の下部:肩甲骨を引き下げ、安定させる筋肉です。ここが働きにくいと、肩がすくみやすくなります。
そのため巻き肩を整えるポイントは、硬くなった前側の筋肉を伸ばし、弱くなった背中側の筋肉を鍛えるという前後のバランス調整です。
巻き肩の姿勢が続くと起こりやすいこと
巻き肩そのものが病気というわけではありませんが、肩が前に出た姿勢が続くと、首や肩まわりの筋肉に負担がかかりやすくなり、肩こりなどの不調を感じる方も少なくありません。
また、若い男性35人を対象にした研究では、背中を丸めて座った姿勢のほうが、背すじを伸ばして座った姿勢よりも、息を吸う筋肉の力が低いという結果が出ています。
胸が閉じた姿勢よりも、胸を開いた姿勢のほうが、呼吸がしやすいと感じる方が多いのはこのためかもしれません。
さらに、胸が開いて肩の位置が整うと、立ち姿や後ろ姿の印象も変わってきます。
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巻き肩は運動で整えられる?研究でわかっていること
首が前に出る姿勢や巻き肩、背中の丸まりを伴う姿勢を対象にした22の研究をまとめた分析(2024年)では、筋力トレーニングやストレッチなどの運動によって、巻き肩の角度が改善したと報告されています。
特に、肩まわりだけでなく全身の筋肉を対象にした総合的な運動プログラムが効果的と考えられています。
巻き肩は日々の姿勢の積み重ねで起こるものなので、短期間で劇的に変わるものではありません。
それでも、正しい方法で続ければ変化が期待できるというのは心強いポイントです。
自宅でできる「伸ばす・鍛える」エクササイズ
ここからは、自宅でもできるエクササイズを紹介します。
回数や時間は目安です。痛みが出る場合は中止し、肩に痛みや動かしにくさがある方は、先に医療機関で相談してください。
伸ばす1:胸の前を開くストレッチ
両手を体の後ろで組み、肘を伸ばしながらゆっくり斜め下へ下げます。
胸を斜め上に向けて広げるイメージで、深く呼吸をしながら20〜30秒ほど保ちます。
伸ばす2:壁を使った胸のストレッチ
肘を90度に曲げて前腕を壁やドア枠に当て、体を一歩前に出して、胸の前が心地よく伸びる位置で30秒ほど保ちます。
左右それぞれ行いましょう。
鍛える1:肩甲骨を寄せる「W字エクササイズ」
両腕を上げてから、肘を体の横へ引き下げ、背中側で腕が「W」の形になるようにします。
肩甲骨を寄せて下げた状態で3秒保ち、15回を目安に、慣れてきたら2〜3セット行います。
肩がすくまないように注意しましょう。
鍛える2:うつ伏せで行う「リバース・スノーエンジェル」
うつ伏せになり、腕を床から少し浮かせて、腰の横から頭の上まで、円を描くようにゆっくり動かします。
肩甲骨を寄せたまま、反動を使わずに10〜15回を目安に行います。
ジムでは:背中のマシントレーニング
ジムでは、ラットプルダウンやシーテッドローなどで、背中の筋肉を鍛えるのも効果的です。
厚生労働省の身体活動・運動ガイドでは、特定の部位だけでなく、胸・背中・腕・お腹・お尻・脚などの大きな筋肉を全身まんべんなく鍛えることや、血圧の急な上昇を防ぐために息をこらえないことが勧められています。
肩甲骨の左右差が気になる方は肩甲骨の左右差はなぜ起こる?「肩甲骨はがし」ってどうなの?、肩の痛みがある方は四十肩・五十肩は年齢だけが原因じゃない? 肩の痛み改善を目指すために大切なことも参考にしてください。
姿勢のクセを知り、自分に合った方法で整える
巻き肩は、日々の生活習慣の積み重ねで起こるものです。
大切なのは、一時的にほぐすだけでなく、正しく体を動かして、良い姿勢を支える筋肉を育てることです。
ただ、どの筋肉が硬く、どの筋肉が弱いかは人によって違います。
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女性トレーナー5名をはじめ、経験豊富なトレーナーが、お一人おひとりの姿勢や体のクセを確かめながら、姿勢づくりと体づくりを同時に進めるプログラムをご提案します。
ご自宅でできるケアのアドバイスも行っていますので、「自分の姿勢がどうなっているか知りたい」という方も、気軽にご相談ください。
参考資料
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」Ⅲ 世帯員の健康状況(2026年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/04.pdf
Sepehri S, et al.「The effect of various therapeutic exercises on forward head posture, rounded shoulder, and hyperkyphosis among people with upper crossed syndrome: a systematic review and meta-analysis」BMC Musculoskeletal Disorders(2024年)https://europepmc.org/article/MED/38302926
Albarrati A, et al.「Effect of Upright and Slouched Sitting Postures on the Respiratory Muscle Strength in Healthy Young Males」BioMed Research International(2018年)https://europepmc.org/article/MED/29682532
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて(2024年)https://www.mhlw.go.jp/content/001195869.pdf
